東京ボブディラン/CONTENTS OF REPORT
BOB DYLAN&BRIAN SETZER ORCHESTRA
あの大失敗追っかけのほとぼりも覚めた1999年2月、懲りずにBobDylanのコンサートを観にNewOrleansとNashvilleへ行って来た。
いつものようにL.A.にとんぼがえりで観に行くのとは違い、今回は観光もかねている。
2月2日デルタ航空成田発18:00の便で出国。
同日16:00Atlantaに到着し、入国審査を済ませ17:20発の国内線に乗り継ぎ17:52にNewOrleansに到着。
空港からは、片道$10のエアポートシャトルという相乗りバンで、フレンチクォーターに到着。
フレンチクォーター付近は高いホテルが多いが、その中では多分一番安いのではないかと思われるホテルにチェックインした頃には、もう暗くなっていた。
部屋に入ると蛍光灯が消えかかってチカチカしていたので、別の部屋にかえてもらい、しばし休息してから街に繰り出した。
ジャズの発祥地であるこの街には、たくさんのライヴハウスがあり一晩中賑わっている。
ケイジャンミュージックを演奏する店で食事を済ませたところで、時差ボケ疲れが出て来たので、人通りのあるところを一通りまわってホテルへ戻った。
明日のコンサート会場への交通手段をまだ決めてなかったので、ホテルの人にバスが走っているかどうかを尋ねたらタクシー以外はわからないと言われた。
2月3日ライヴ当日
早起きしてなにはともあれ見てみたかったミシシッピー川まで歩いて行った。
一晩中起きてる街なので、早朝のミシシッピー川付近には殆ど人影がなく、朝もやの中で泥色の川が脈を打つ姿は印象的だった。
バスの路線図を手に入れ、なんとか会場近くまで行くバスを見つけた。
昼間のフレンチクォーターを探索した後、いったんホテルへ戻り、バスがどれくらいの間隔で走っているのか、全くわからなかったので早めに会場へ行くことにした。
20分くらい待ってやって来た満員のバスは、私以外は全員黒人だった。
次はどこそこというアナウンスなどないので、集中して見ていると右手に会場が見えたのですぐにベルを鳴らしたが、次の停留所までは距離があったようで、結構歩いて戻ることになった。
会場に着いたのだが、予想以上にまわりには何もないところだった。
グッズの販売をしていたり、誰かがギター抱えパフォーマンスしたりなどとあってもよさそうだが、誰もいない。
地元のラジオ局が会場の前で生放送していたのだが、それ以外は人がほとんどいなかった。
早く来すぎてしまった。
Lake Front Arenaだけあって大きな湖がそばにあったがそこでボーッとしてるのにも限度があった。一度フレンチクォーターまで戻ろうかとも考えたが、それも時間的に中途半端なので、スーパーマーケットでパンとジュースを買ってのんびりと待つことにした。
開場時間近くになるとようやく人が集まって来た。
黒人の割合の方が多いNewOrleansでもディランのコンサートに来るのはやっぱり圧倒的に白人で、それ以外の人種は自分も含めひとにぎりしかいなかった。
中へ入ると、ステージ上には今回一緒に全米を回っているブライアン・セッツァーオーケストラのセットがあった。
席は2階席で、あまりいい席とは言えなかった。
ほぼ時間どおりに始まったブライアン・セッツァーオーケストラの演奏は、ホーンセクションありでスイングしており、新譜も購入していたので楽しむことが出来た。
セッツァー氏のギターは、やっぱりめちゃくちゃうまかった。
しかし、そんなギターテクニックも素晴しいがアッシの気持ちは、はやくも御大のペケペンギターを欲していた。
Dylanバンドのセッティング時に、バッキーとケッパー両氏はチェックのためステージ上を行ったり来たりしていた。
バッキーとケッパーが一旦下がってしばらくして、ずらずらとみなさんと一緒にディラン登場!
1. Gotta Serve Somebody
2. Million Miles
3. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again
4. Make You Feel My Love
5. Silvio
6. Stone Walls And Steel Bars (acoustic)
7. Masters Of War (acoustic)
8. Girl Of The North Country (acoustic)
9. Tangled Up In Blue (acoustic) (harp)
10. Honky Tonk Blues (Hank Williams Sr.)
11. Can't Wait
12. Highway 61 Revisited
(encore)
13. Love Sick
14. Leopard-Skin Pill-Box Hat
15. Blowin' In The Wind (acoustic)
16. Not Fade Away
今回目立ったのはコーラスの充実ぶりだ。
何年か前まではコーラスがちょっとな〜と思えた時もあったが、なんのその6.15.16.など感動的でありました。
ほぼ毎日のようにライヴをやっているのにバンドはマンネリ化することもなく、どんどんと良くなっている。
これは、ひとつの理想型である。
もちろん、ペケペンギターも健在で、弾きながらの腰を屈めての動きも以前にもまして激しくなっていた。
そして、今回は笑顔も目立った。
なんだか始終嬉しそうに弾いていたのであった。
地元ネタでは、メンフィスが近いだけに3. も盛り上がったが、なんといっても9.のGoing Down To New Orleans♪というヴァースが歓声と拍手とで一番盛り上がった。
そしてその9.の最後で見せたハーモニカが、グレイト!
最初は小さい音で入り段々と抑揚を見せながら、最後は力を振り絞っての名演だった。
近年のディランは声も志村けんみたいだし、ハーモニカも衰えたという批評もあるが、16. などでみせた高音域のヴォーカルも今だ健在で、ハーモニカも腹の底から絞り出しており、決して口先だけで吹いているものではなかった。
と力説してもしょうがないが、とにかくそういう事なのだ。
個人的には、1.や14.などはお馴染みの曲なのだが生で聞くのは初めてであり、6.やハンクの10.などもライヴでしか体験できないものであったし、何にせよ南部でディランを観るのはひとつの夢でもあったので満足することが出来た。
印象的だったのは、やはり1994年のNHKホールで聞いて以来の15.とそれに続くバディー・ホリーの16.だった。
15.は、先ほども触れた素晴しいコーラスを含む今回のバージョンによって、1999年の新たな風に吹かれていたし、16.を今回取り上げたのは、TIME
OUT OF MINDのレコーディング中一緒にバディー・ホリーがいたような気がする、というグラミー受賞時のコメントにあったような想いからかどうかはわからないが、コンサートを締めくくるにふさわしい演奏を聞かせてくれた。
ボブディランとそのバックバンドではなく一つのグレートなアメリカンバンドのコンサートを観終えた気分だった。
この日からは4. がBobDylan.com.のPerformanceに収録。
会場を出て、駄目もとでバス停に行ってみたら、どうやらまだバスが走っているらしく待つことにした。
コンサート帰りの少年が、バスを待っているコンサートを観てない人に、意気揚々としながらコンサートの模様を話しているのを見てたら、何だか嬉しくなってきた。
フレンチクォーターに着いたところで、夜食ついでにライヴハウスへ立ちより黒人ブルースバンドの演奏を聞いた。朝までいろんな店で盛り上がっていたが、これ以上観ると今日のコンサートの印象が薄れそうだったのでホテルへ戻った。
次の公演は、2月5日MemphisのNew Daisy Theater なのだが、この追加公演が決まった時には、もうすでに変更不可の格安航空券を購入してしまっていたので、2月6日の公演があるNashvilleへ行く途中にあるにもかかわらずNew
Daisy Theaterでのコンサートは諦めざるをおえなかった。
残念。
よってNashvilleへ行くまであと2日NewOrleansでのんびり過ごすことになる。
今年の1月からフレンチクォーター内にザ・バンドのリヴォンヘルムが経営するライヴハウス(現在はもう営業していないらしい)がオープンしており、滞在中入びたる事になった。
オープン1ケ月間はなんと毎日のようにザ・バンドが演奏していたらしいのだが、惜しいことにほんのすれちがいで観る事が出来なかった。
これまた残念。
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2月6日ライヴ当日
NewOrleansを午前10時の便で出発しAtlantaで乗り継ぎ、Nashvilleには午後2時頃到着した。
Nashvilleの空港内にはギブソンのギターが飾ってあったり、テンガロンハットをかぶった案内嬢がいたりして、ジャズの街から一転してカントリーの街へやって来たことを実感させた。
空港からコンサート会場があるダウンタウンまではシャトルバスを利用。
会場まで歩いていけるホテルにチェックインして、取り敢えず会場であるMunicipal Auditoriumまで行ってみた。
NewOrleansの時のように誰もいないのかと思いきや、すでに並んでいる人が結構いるではないか。
後でわかったのだが、この日の一階席はオールスタンディング形式だったので少しでも前で観ようとみなさん早くから並んでいたのだ。
一旦会場をあとにして、ライヴハウス、楽器店、レコード店などをひとまわりした。
もっとゆっくりいろんな所を見たかったのだが、開演時刻が迫って来たのでホテルへ戻り会場入りした。
ダフ屋もいたし、当日券も売られていた。
チケットは2階席だったので期待はしてなかったのだが、これがなんとステージに近く1階席のオールスタンディングのすぐ横といった感じで、こちらの人は皆さん背が高いのでスタンディングだと見づらく、かえって自分には1階席よりもいい席に思えた。
しかも値段も$25とナイスプライスだったのだ。
一瞬ダフ屋から1階席を買おうかとも思ったがやめておいて正解だった。
席は確認したのでビールを買いに行くことにした。
買っている時に4、5人の日本人と思われる人を見た。
こちらに住んでおられる方たちだろうと思い、声もかけなかったが、その中に日本から観に来られていたYさん夫妻がいらっしゃったのは、後に判明した事だった。
Yさんは、ボブディランのDATトレードのホームページを開設されている方で、私も何度か拝見させてもらっていました。
以前から凄い人だなと尊敬しておりましたので、是非お話がしたかった。
その旨をYさんに自己紹介とともに伝えたのですが、そのきっかけになったのが、Yさんのホームページに掲載されているアメリカツアー鑑賞記で、それに2/6のコンサートの模様もくわしく書かれてますので、私のつまらないレポートよりぜんぜん素晴しいですから、コンサートの様子に関してはそちらをご覧ください。(ちなみに鑑賞記にあったフリーペーパーですが、私は3部しか持って帰らなかった。さすが、Pさん、Yさん、恐れ入りました。)
といいつつも一応少しだけレポートします。
ビールを買って席に着いた頃には、客席もだんだん埋ってきており、リーゼントに皮ジャンにタトゥーと見るからにブライアンセッツァーファンも結構いた。
隣の席の白人カップルが、おまえはどっちを観にきたのか?と聞いてきたので、ディランだと答えるとこの人たちも嬉しそうにそうか、そうか、と言っていたが、案の定ブライアンセッツァーが始まるといなくなってしまった。
う〜ん、はっきりしてる。
セッツァーオーケストラはNewOrleansの時よりぜんぜん客受けが良く盛り上がっていた。
もしかして、今日はディランファンは割と少ないのかと思いきや、ディラン登場とともにその不安は打ち消された。
1. Gotta Serve Somebody
2. Million Miles
3. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again
4. Make You Feel My Love
5. Silvio
6. Stone Walls And Steel Bars (acoustic)
7. It's All Over Now, Baby Blue (acoustic)
8. Friend Of The Devil (acoustic)
9. Tangled Up In Blue (acoustic)
10. Honky Tonk Blues (Hank Williams)
11. Can't Wait
12. Highway 61 Revisited
(encore)
13. Love Sick
14. Leopard-Skin Pill-Box Hat
15. Blowin' in The Wind (acoustic)
16. Not Fade Away
アコセットが多少違ったくらいで、2月3日と大体同じ様な選曲だった。
しかし、さすがカントリーの街だけあって、ガースブルックスがヒットさせていた4.や、スタンレーブラザーズの6.などは他では見られないほど受けがよかった。
あと7.のBaby Blue の客による大合唱も印象的だった。
なにわともあれ御大はやけに楽しそうだった。
前回不覚にも使用する機会がなかったオペラグラス(とほほ)も今回は大活躍で、隣のカップルにも貸したら大喜びされ、いつの間にか3人で順番に交替に覗くはめになってしまっていた。
今回もハイライトである15.16.の連発でコンサートは幕を閉じたのだが、この素晴しいバンドの要でもあるバッキー在籍の演奏を聞くのは、個人的にはこの日が最後になろうとは、この時は知るはずもなかったのである。
この日からは13. がBobDylan.com.のPerformanceに収録。
会場を後にして、食事をするためにメインストリートまで歩いていったのだが、12時近くなっていたのでライヴハウス以外で店を捜すのに結構苦労した。
何とか見つけたセルフサービスのピザ屋で済ませ、ホテルに帰るまえにライヴハウスに入った。
ギターメーカーであるギブソン社が経営するライヴハウスだったのだが、ここで面白かったのは客が飛び入りで演奏出来る時間帯が設けられていて、この日は希望していた4人がステージ上に並んで座り、1曲ずつ交替にそれぞれのパフォーマンスをし、それをふたまわりしたら終了というものだった。
オーディションのようなものなのだろうが、デブおっさんのベース弾き語りあり、おたく青年によるE.ギターインストあり、もちろんカントリー娘の弾き語りありと、まったく統一性のない世界が、次々に繰り広げられるところがまた面白かった。
しかし、いくら本場の人たちだからって下手な人の演奏は結構つらかったが、この方式はとってもグッド。
ホテルに戻り、今回の観光のメインであるコンサートは今日で観終えてしまったので、明日の予定であるNashville巡りの計画を立てながら就寝した。
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2月8日
13:30の便でNashvilleを発ち、シンシナティで乗り継ぎしてL.A.に着いたのは18:00だった。
なぜL.A.によったかといえば、もちろん日本への帰国の順路の途中にあるというのもあるけれど(料金は同じなので)、前回ヴァンモリソンを観に来た時(結果的にはそうなってしまった)に世話になった友人に会うためだった。
しかし、なんとこれがまた新たな不幸の始まりだった。
2月10日にL.A.を発つ予定なので、L.A.には2泊の滞在だ。
2月9日の夕方、ハリウッド方面からダウンタウン方面へと車を走らせていた。
友人はいつも車内ではディランを流してくれて、これがこちらの風景にマッチしてまたグッドなのである。
この時もアルバムHARD RAINが流れており、2人はメンフィスブルースアゲ〜ン♪などと一緒に歌いながらフリーウエイを降りた。
しかし、フリーウエイを降りてすぐにこの車のスピードが落ちてないのに気付いた。
しかも信号は赤だ!
赤!赤!と友人に向かって叫んだ瞬間に、友人はブレーキと同時にハンドルを左に切ったが、その時すでに目の前には大きなMTAバスがあった。
ここからは、スローモーションである。
ぶつかる!と思った瞬間からスロー再生のように、時間がコマ送りされ、やたらと長く感じられたので、もしかしたら助かったのか?と思った瞬間にドーン!という音と共に身体に激痛が走った。
バスの脇腹にモロに突っ込んだのだ。
気付いた時には、なんとか2人共生きてることぐらいしか確認できなかった。
ARE YOU OK?と心配そうに車を覗く黒人のおじさんに言われて段々と状況がつかめてきた時には、ボンネットから煙が立ちのぼり、道路にはガソリンらしきものが流れ出していたので、爆発してはたまらんぞとなんとか車から脱出しようと試みるが、バットで殴られたような感じの痛みがはしり身体が思うようにならない。
ようやく脱出して外から車を見てまた愕然としてしまった。
フロントガラスから前はぐしゃぐしゃにつぶれていたのだ。
シートベルトをしてなかったらどうなっていたか考えただけで恐ろしい。
すぐにポリスが来て現場検証が始まった。
バスの脇腹はかなりへこんでいたが、バスには3人の乗客しか乗っていなく、けが人がでなかったのが不幸中の幸いだった。
こちらの病院へ行くのはなにかと面倒になるので、事後処理は友人にまかせ、無理をしてでも予定通り翌日日本へ帰ることにした。
とにかく生きててよかった。
この事故の印象が強烈すぎて、すっかりこの度の追っかけコンサートの記憶が薄れてしまったが、少しずつ記憶を取り戻しながら今この文章を書いている。
最近ようやく身体の痛みもなくなってきてホッとしているところなのだが、なんとそこへBOBDYLAN&PAULSIMONのジョイントコンサートの情報が入って来た。
こんな目にあっても俺はまた追っかけに旅立つのか?
OH,MAMA CAN THIS REALLY BE THE END!
それは、次回のレポートで。
といいつつも、今だに車に乗るのは怖いし、事故った時に流れていたHARD RAINもあれ以来一度も聞いてない。
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