東京ボブディラン/CONTENTS OF REPORT
-UCLA Pauley Pavilion 2DAYS-
エルレイシアターでのライヴ体験から約半年たった1998年の5月21日と22日に、再びロサンゼルスでボブ・ディランを見る機会に恵まれた。
UCLA Pauley Pavilionでのヴァン・モリソン、ジョニ・ミッチェルとのジョイントライヴである。(単独ライヴの方が良いのだが、、)
ラッキーにも、4月から友人が.L.A.で就職していたので、ライヴチケットもホテルの予約も頼む事が出来た。
5月21日ライヴ当日、またまた大韓航空で成田からL.A.に到着。
ありがたや〜、友人のお出迎えつきである。
車中アルバムHARDRAINを聞きながらフリーウェイをとばし、ホテルがあるダウンタウンに到着。
チェックインを済ませ、時差ぼけで疲れていたので、少し休んでから友人と待ち合わて会場へと向かう。
途中エルレイシアターの前を通り過ぎると、何だかとっても懐かしさが込み上げて来た。
ライヴチケットがあると言う事は、こんなにも余裕が持てるもんだったんだとしみじみ思う。
サンセット通り沿いにあるTOWER RECORDに、今回のライヴのPR用にボブの看板(よく見るとあまり似てない)が設置されていたもんだから、すかさず記念撮影。
時間ぎりぎりでUCLA Pauley Pavilionに到着した。
ん!でかい会場だ。
ダフ屋はいなかったが、当日券は販売されていた。
ドーム状の会場の回りでは、アーティスト公認グッズの出店があり、学生が多いせいか、ギターを抱えハーモニカホルダーを付けたパフォーマー兄ちゃん達が何人かいたが、ほとんど無視されていた。
さてと、オープニングはヴァン・モリソン、映画ラストワルツで見せたあのキック踊りを期待したが、もちろんやらなかった。
約1時間程のステージの後は、ジョニ・ミッチェルが登場。
彼女を見るのは、1994年ボブも出演した奈良の東大寺あおによし以来だ。
そして、待ってました、ディラン登場!
- 1. Absolutely Sweet Marie
- 時差ボケとヴァン、ジョニの2大ステージで大分疲れたところで(ファンの方すみません)、この8ビートがやけに気持ちいい!
しかも、ディランは元気で今日は動きが速いぞ!
そして、コードと不調和音を醸し出したまま終わる倒置法の様な唱法(私はこれを村田英雄唱法と呼んでいる)も好調。
この曲は、97年の秋田で聞いて以来かな。
- 2. The Man In Me
- これまた好きな曲が2曲目に登場。
しかし、こういった曲を年齢を積み重ねた御大に歌われると、ジーンと来ますな。
- 3. Cold Irons Bound
- かっこいいイントロで始まり、リズムがぐんぐんと迫り来る感じで結構圧倒された。
- 4. Just Like A Woman
- いや〜今日の歌は素晴しい!
1番、2番、3番と段々に盛り上がっていき、最後はめずらしくシャウトまで登場。
座っていた客も全員スタンディングオベーション。
- 5. Silvio
- 申し訳ないが、この曲になると自然にマイ休憩タイム状態になるように身体が条件反射してしまう。
いくらおいしいステーキでも、毎日は食べられない。(ちょっと、違うか)
- 6. Rank Strangers To Me (acoustic)
- DOWN IN THE GROOVEに収録されたバージョンと感じが違ったので、最初はなんの曲だか分からなかったが、1番が終わる頃に判明。
カントリー色溢れ、コーラスがGOOD!
- 7. Masters Of War (acoustic)
- アメリカ人は今この曲をどう思っているのかな?
- 8. Tangled Up In Blue (acoustic) (with harp)
- ペケペンギター絶好調、そして何と久々のハーモニカ登場!
わたし的には1994年の来日公演以来で聞く御大のハープ、もう満足でございます。
後にBobDylan.com.のPerformanceに収録。
- 9. Make You Feel My Love
- この曲を生演奏で聞くのはこれが初体験、とろけそうなボーカルとやっぱりギターソロが好調。
しかし、わびさびのあるいいバンドだな〜。
BobDylan.com.のPerformanceに収録。
- 10. Highway 61 Revisited
- いつもは、ただのお祭りになりがちだが、やはり今日の御大の歌は気合いが入っており、いつになくよかった。
- (encore)11. Forever Young (acoustic)
- アンコールのどさくさに紛れて前の方へ行った。
最近のアコバージョンでのこの曲は、素晴しい。何度聞いても感動してしまう。
- 12. Love Sick
- グラミー受賞時の演奏のように爆発したギターソロが再現された。
- 13. Rainy Day Women #12 & 35
- この曲もちょっと聞きすぎた感があるが、10. と同様で今日はGOOD。
- 14. Restless Farewell (acoustic)
- いつもは、13.で終わって帰ってしまうのだが、今日はなんと再登場!
フランク・シナトラが亡くなった直後であり、場所も葬儀が行われたL.A. であることからもしかしたら、過去シナトラに捧げて歌ったことがあるこの曲をやるのではないかと、うすうす予想はしていたが、殆どライヴでやったことのない曲なのでどうかとも思っていた。
その矢先の登場である。
このシナトラ誕生パーティーでの御大の素晴しいパフォーマンスは、映像にも残っており、今回シナトラが亡くなったことで、私もその映像を何度も見て涙しておりましたので、御大がシナトラの名前を出し、Try
My Best といってこの曲を始めた時には、もうすでにウルウルしてしまいました。
イントロからしてそんな状態なので、曲が終わった頃にはもう感動を抑えきれずやたらとハイな状態でになってしまった。
ホテルに帰ってからもハイな状況は続き、この感動を誰かに伝えたく迷惑を顧みず、わざわざ日本の知人に電話して、今日のコンサートがいかに素晴しかったかを伝え、こんだけ感動出来ればもう満足だ、とまで言ってしまった。
これが、後に災いを招くことになったのだが、、、。
ともあれ、Restless Farewellのおかげもあって、過去観たディランのコンサートの中でも思い出深いコンサートとなった。
THANK YOU BOB!
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5月22日ライヴ2日目
昨日の感動の余韻を残したまま、今日もコンサートが観れる幸せにひたりつつも、今夜の席は昨日より更に悪い席だったので、オペラグラスを買う事にした。
なんとかカメラ店を捜しあて、いろいろ試して適価なものを買ったのだが、この時対応してくれた日系の店員さんが、ディランファンだったもので話がしばらく盛り上がった。
彼は、米国ではもちろんのこと仏国でもコンサートを観た事があるらしく、自慢していた。
夕方、友人と食事をする約束をしていたので、一旦ホテルへ戻った。
ファンの方から怒られそうだが、私としましてはヴァン・モリソン、ジョニ・ミッチェルとも昨日1回観れたことで充分だったので、今日はちょっと遅れて行くことにした。
コンサート会場近くでレコード屋めぐりをした後、友人と食事をし、コンサート終了後に迎えに来てくれるとの約束を取り付け、会場へ向かった。
中に入るとヴァン・モリソンのステージは終了しており、次のジョニさんが歌っていた。
昨日と同じように観客のウケは良い。
ジョニ・ミッチェルのステージ終了後、私の隣の客も含め、パラパラと帰る客が出てきた。
3ステージなので、コンサート終了後にはかなり遅い時間になり、しかも昨日は混雑した駐車場から車を出すのに約1時間程かかったので、それを見越しての早帰りなのか、しかしディランを見ずに帰るとは、さすが大物同士のジョイントならではの事なんだろう。
ステージ上に次のセットが運ばれて来たので、オペラグラスをピント合わせの為に覗いた。
とっ、その瞬間、私の心臓は凍りつき、やがてばくばくと音をたて始めた!
オペラグラスのレンズ越しに見えたものは、コンガなどのパーカションセットだったのである。
えっ、うっそー!今回ディランはパーカションなど使わないはずだ!
からだ中の血が一気に頭にかけ上がって来るのがわかった。
いやな予感はもう喉元まで来ていたけれど、何とか騙し騙し抑えようとしていた。
そうだ、今日は特別パーカションが、ゲストで入るに違いない。
落ち着け、落ち着くんだ、ににんがし、にさんがろく、にしがはち、って九九を言ってどうする!
しかし、そんな思いも一瞬にして粉々に打ち砕かれてしまった。
ステージに次々と運ばれて来たのは、確かに昨日も見たヴァンモリソン用のステージセットだったのである。
今日の出演順番は昨日と同じじゃないのか!
ディランの出番は1番目にかわり、もうすでに終わってしまってると言うのか!
客が帰っていってたのは、そういうことだったのか!
誰か教えて!!
それでも私は無理やり希望を持ち続けることにした。
今日は、時間がおしているのに違いない。
まわりの人に聞けば、すぐにわかる事なのだが、結果を知るのがこわくて聞き出せなかった。
私のからだからすっかり血の気が引いてしまい、もう生ける屍状態になってしまったところで、軽快なミュージックに乗ってヴァン・モリソン登場。
あー、悪夢が現実のものになってしまったようだ。
観客は昨日より盛り上がっていた。
ヴァン・モリソンには何の恨みもないが、場内が盛り上がれば盛り上がるほど、私は盛り下がって行った。
この状況はかなり辛く、ディランのステージが終わったことを確認してこの場を立ち去りたかったが、終了時間に友人と待ち合わせしていたので、帰るわけにもいかない。
コンサートが終焉をむかえようとした頃には、絶望感はピークに達していた。
最後の望みはアンコールにディランが登場して共演するということしか残されていない。
もう、半分祈るようにしてその時を待った。
しかし、その時はやって来なかった。
次々に帰って行く観客を見ながら、しばらく呆然としてなかなか立てなかった。
あ〜あ、やっちまった。
昨日はあんなに幸せだったのに、今日はそこから一気にどん底にころげ落ちた気分だった。
もしかしてわざわざ日本からコンサートを見に来て、特別な理由もなく見なかった人というのは、歴史上私ひとりだけではないだろうか?
考えてみると、まさにディランが演奏していた瞬間に、私は会場すぐ近くのレコード屋でディランの貴重盤を試聴したり、友人と盛り上がりながら食事していたことになる。
本人がそこで歌ってる大事な時に、すぐそばでその人のレコードを買おうか、買うまいかで悩んでいたなんて、アホだ。
食事中にも「昨日と順番がかわって今頃ディランやってたりしてね」などと冗談を言っていたのだから、もう手がつけられないほどアホだ。
帰途に着く群衆の先に、ニコニコ顔で手を振る友人の姿を発見した。
「最高だったよ!」という答えを期待しての友人の「どうだった?」という問いに顔を引きつらせながら、その旨を伝えた。
友人は驚いて信じられないといった感じで、まわりの人に「そうなのか?本当なのか?」と聞きまくってくれていたがその様子を見てると、何だか余計に悲しくなってきた。
すべて自分自身が悪いのだが、友人も「出番がかわることはまずないからゆっくりと食事でもしよう」などと誘っていたものだから、責任を感じているらしく何度もあやまってくれた。
完全に落ち込んではいたけれども、よくしてもらっている友人に責任を感じてもらっても困るので、「全然平気平気、1回観れれば満足だから心配しないでいいよ」なんて逆に慰めているうちにだんだんと落ち着いてきた。
しかし、昨日のコンサートには大満足していただけにあながちウソでもなかった。
逆に21日を見逃していたら、いつまでも後悔することになっただろう。
後に判明したが、22日にはRestless Farewellをやっていないのである。
とはいえ、やっぱり観たかった。
終わったことをくよくよしてもしょうがないので、友人いきつけの酒場にくりだすことにした。
この失敗談は、いく先々の店でウケがよく、なんだかちょっと嬉しかった。(嬉しいことあるか!)
もちろん私は狂った様に、朝まで飲んでいたらしい。
かなり二日酔だったが、翌日はもう日本へ帰るので、昨日オペラグラスを購入した店のディランファンの店員にもう一度会いに行った。そして、オペラグラスは必要じゃなかったと伝えると悲しそうな目をして「オ〜またキナサイ」と言っていた。
こうやって、大失敗含みの今回の追っかけは終了したが、今でもヴァン・モリソンを聞くと憂鬱になるくせは直っていない。彼には、なんの罪もないのだが、、、、。
ここに観るはずだったセットリストを記載します。
- Los Angeles, California May 22, 1998 UCLA Pauley Pavilion
- 1. Maggie's Farm
2. If You See Her, Say Hello
3. Cold Irons Bound
4. Simple Twist Of Fate
5. Silvio
6. Rank Strangers To Me (acoustic)
7. Tangled Up In Blue (acoustic)
8. This Wheel's On Fire
9. Highway 61 Revisited
(encore)
10. It Ain't Me, Babe (acoustic)
11. Love Sick
12. Rainy Day Women #12 & 35
う〜ん、やっぱり観たかったわよ〜ん。
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