東京ボブディラン

東京ボブディラン/CONTENTS OF REPORT

-DYLAN ALIVE!-

1997年の年末からインド旅行を計画していたので、まとまった休みを取っていた。
しかし、出発直前になってディランのロサンゼルスはエルレイシアターでの5夜連続ライヴの話が飛び込んで来た。
この時、インターネットなどに無縁だった私は、情報を知るのがあまりに遅すぎたのだ。
しまった!
とにかく例の病気から復帰したディランをこの目で是非確かめて見たい。DYLAN ALIVE!
はてはて?インド旅行を取るべきか?アメリカ旅行を取るべきか?
こうして悩んだ末、“アメリカでディランを見た後、そのままインドへ行ってしまおうツアー”に計画は強引に変更された。

何とか調整して、何はともあれ東京〜L.A.の往復航空券を出発ぎりぎりでGETした。
まだクリスマスシーズン前だったので、安く手に入れられた。
しかし、当然ながら肝心のライヴのチケットが手に入らない。
取り敢えず行こう、行ってみなければ何ともならない。
ラッキーな事に、急な旅行なので当然一人旅だと思っていたものの、私立中学の地学教師の友人が、年内の授業が予想外に早く終了したから、グランドキャニオンを見に行きたいとの事で、途中まで同行する事になった。

12月15日朝、大韓航空の便で成田からL.A.に到着。

アメリカは、ニューヨークに一度行った事があるが私の英語はお世辞にもうまいとは言えず、そこで期待してた友人の英語はと言うと、これがまた私同様で“本当にそれで一人で車運転してグランドキャニオンまで行くのかよ〜”と自分の事も心配だったが彼の事も十分心配になって来た。

彼も2、3日はL.A.に滞在する予定なのでまずは、レンタカーを借りて明日のライヴ会場探しに付き合ってもらった。
車の無い私は、会場の近くに宿を見つけなければ電車もタクシーもない街では悲惨なのであります。
いろいろあって、ハリウッド近くのウィルシェアー通り沿いにある会場にたどり着いた時には、夕方近くになってしまった。

近くに安モーテルを見つけて一安心、途中TOWER RECORDのチケットマスターでだめもとで明日のチケットを探したが、もちろんSOLDOUT。

だめだ、時差ぼけで疲れた、もう寝よう、明日は明日、ライヴが見れなくても俺はロス観光に来たんだ!と少し弱気になりながら、そのまま熟睡。

12月16日ライヴ初日

夕方、楽器屋めぐりをした後、会場に早めに到着。
もう人がチケット片手に2列になって並んでいる。 羨ましいぞ、おまえたち!

もちろん当日券など売られておらず、まず○○屋を探さなければならない。
いた!取り敢えず、第一関門突破。

こちらの人は○○屋らしい格好をしてる訳じゃないので組織なのか個人なのかよくわからなかったが、見ている内に段々と○○屋の全体像がつかめて来た。
組織と個人で売ってるやからに交互に値段を聞きながら相場を確かめる。
40$のチケットが150$と跳ね上がっている。

とにかく、なめられてジャパニーズプライスにされたまるかと、英語が下手なのがばれない様に気合いをいれる。
しかし、誰もわざわざ日本から見に来てるとは思ってもいないので向こうも普通に向こうのプライスで交渉してきた。
後は、首を横にふるか縦にふるかが問題だ。

おそろしいことにこの時は、150$のまま下がらなかったら見るのはやめようと本気で思っていた。
それはやっぱり、150$はアメリカ人にとっても、高いからだ。
見たくても、値段であきらめている人もたくさんいる。
それを、いくら好きだからって、旅行気分でぱっと払ってもいいものか?

 いいんだよ、何をここまで来てためらっているんじゃい!金は天下の回りもんだろうが、わざわざ交通費と時間かけて見に来てるのに、下手な考え持ちやがって、おめ〜そんな理屈こねる前に、ブート買うのやめろっつってんだよ!

こんな相反する二人が私の中で葛藤している間にも、openを待つ人の列はどんどん伸びて行き時間も段々押し迫って来た。

粘って、ようやく130$まで落ちて来た。
この時点で買う人も出てきた。
しかし、この場に及んでもまだThe Man In Me同士は葛藤していた。

もう時間がない!

ここで腹をくくるのだ。最後の交渉だ。
少しでも値段が下がったら買おう。そうじゃなければ帰ろう。
どうせ交渉するなら、後で悔しくならないようにと元締めと交渉する事にした。

“125$にしてくれ”と頼む。
“130$と125$同じだろう”と言ってなかなか125$にはならない。
“アホ!おまえにはたったの5$でも、わしには大きな意味があるんじゃ!”とこちらも譲れない。

実際、今回はライヴハウスでの公演なので、余っているチケットも殆どない状態であり、○○屋が何枚くらい持っているかもだいたい把握出来た。
公演が近づくと、少し値段を落としてでも一枚で売るよりはペアで売った方がいいから、彼は5$で粘っていたのではなく、そういう理由で粘っていたのだ。

しかし、買いそうな二人づれも現われず観念したか、もうひと粘りして120$で交渉成立。(勝ったのか負けたのかよくわからない)

チケットを握り締めて急いで入ろうとすると、狭い会場なので検査が厳しい。

何とか間に合った。場内は、ザ・バンドの映画ラストワルツでのライヴ会場のような内装で、天井にはシャンデリアが二つ吊ってあり、なかなか良い雰囲気だった。
入ってすぐ正面にドリンクバーがあり、2階席(ちょっとしかない)はVIP席になっているようだった。

人の隙間を掻き分けて、ステージ近くまで行けた。
こちらの人は背が高いので、オールスタンディングだと170cm弱の私には結構つらい。
ライヴハウスだからか、思ったより若い人の方が多かった。
これまた知らなかったのだが、オープニングアクトにベックの弾き語りが1時間くらいあって、PM9:00頃例のアナウンスの後、いよいよ大御所登場!

1. Maggie's Farm
今回は特別ひねったリフなどつかわずオリジナルに近い感じ。
ストレートな疾走感のある演奏。
ディランはと言えば、元気そうだ!よかった、よかった、とにかくよかった。(健康一番!)

ん?ギターの人が違う、このロン毛のにーちゃんは、誰じゃ?(後にラリーさんと判明)
ジャクソンさんはどうしたの?
来日公演でたまにイスに座ってギターを弾いていたが、やっぱり身体の調子が良くなかったのか?などと余計な心配をする。

2. Tonight I'll Be Staying Here With You
この曲は米国で聞くに限る。ギターソロもいいぞ。
3. Cold Irons Bound
待ってました、初めてライヴで聞くTOOMからの曲。
アルバムバージョンより、リズムが強調されていた。
そしてラッキーな事にこの演奏はLOVESICK〜DYLAN ALIVE! VOL.1に収録され発売される。
4. You Ain't Goin' Nowhere
もうイントロを聞いただけで、嬉しい気分なのだ。
KEYを1音上げているようである。
お〜、ラリーさん加入でバンドコーラスが充実している。
そして何とエンディングのサビ繰り返し部分では、アカペラで歌っている。
可笑しさと感動とが入り交じって変な気分。
バッキーのgoodなスチールに、絡み付く先生の1音弾きギターも凄かった。
5. Can't Wait
これもアルバムよりタイトな演奏で、ボーカルも表情豊かだった。
6. Silvio
もう仕訳ないがさすがにこの曲は97年2月の来日公演でちょっと聞きあきてる。
しかし、ギターがラリーさんバージョンだったので、今回はちょっと新鮮。
7. Cocaine Blues (acoustic)
ディランのA.ギターが、来日時のギブソンのJ-50からJ-45に変わっていた。
このバージョンもDYLAN ALIVE! VOL.1に収められた。
8. The Lonesome Death Of Hattie Carroll (acoustic)
泣けた。
歌詞がダイレクトに伝わる人たちの中でこの歌を歌っている。
サビが終わると大きな歓声。個人的には、1994年北九州で聞いた以来。
このタイプの曲を今のディラン節でやられるとそれだけでもう泣ける。単純すぎるぞ俺。
後にBobDylan.com.のPerformanceに収録。
9. Tangled Up In Blue (acoustic)
ラリーさんのギターで始まるバージョン。
最初は、フンッ、ちょっと若すぎるアレンジじゃないの?と思ったが、終わる頃には異様に盛り上がってしまった。
またまた単純すぎるぞ俺。
10. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again
来日公演よりスピード感がある演奏でカッコ良かったが、個人的には2/8国際フォーラムでのゆっくりめのバージョンの方がメロディーの変化が多様でモアベター。
11. This Wheel's On Fire
おお、出た!予想外の曲でなんか得した感じ。
演歌チックなイントロが印象的。
12. 'Til I Fell In Love With You
メンバー紹介の後、TOOMから本日3曲目の演奏。
これが最後の曲だったのかと、ちょっとすかされた気分。
BobDylan.com.のPerformanceに収録。
(encore)13. Highway 61 Revisited
アンコール1曲目。やっぱりラリーさん加入で、バンドが若くなった感じで勢いがある。
14. Forever Young (acoustic)
待ってました、なんていい曲なんだ。
病気を克服して、老いてもなお若く歌い続ける御大が今歌うForever Young、美しい!
15. Love Sick
そして本日のハイライトのひとつLove Sick登場。
新譜発売直後なので会場のうけもいい。
イントロはバッキーがスティールで担当し、御大が歌の合の手で入れるギターもカッコ良く、切ないのだが強い意思が伝わってくる演奏。
ジーンと来るシーンだった。
16. Rainy Day Women #12 & 35
お決まりの曲だが、このシュチエーションの中ではやっぱり違って聞こえた。
会場は盛り上がったまま本日は終了。

入った時には、興奮していて気がつかなかったが、会場の左隅で今回のライヴのポスターが売られていた。取り敢えずは見れてよかった!しかも、こんなちいさな箱で。

そして何よりも嬉しかったのはディランが元気だった事だ。 正直いってそんなにすぐにライヴに復帰しなくても、もう少し休んでればいいじゃないかと思っていたくらいだからだ。 興奮も覚めやらぬ間に、よし、明日もまた来るぞとかたく誓いながらエルレイシアターを後にした。

看板 チケット

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12月17日ライヴ2日目

今日も元気に○○屋と交渉。
昨日と同じ○○屋もいる。
おお、何と今日は90$からスタート。

昨日の事を思えば、すぐにでも買いたい気持ちになったが、オープニングアクトがスタートして一番安くなったところで買うことにした。
その時を待って、75$まで交渉。
これ以上下がりそうもないので、この辺で妥協。

入場すると、あれ?ベックじゃないのか?
そうか日替わりなのか、今日はジュエルという女性シンガーの弾き語りである。
ビールを買って飲む。
さて何処を陣取ろうか?といっても結構ギュウギュウだが、、。
昨日は近くで見る事を優先させたが、今日は音が一番良いところを優先して真ん中よりちょい前あたりを確保。
あ〜この一連の行動は、昨日に比べて何たる余裕なのだ。
ビールも手伝って幸せな気分になってきたところで、今日も待ってました御大登場!

セットリスト
1. Maggie's Farm
2. Senor (Tales Of Yankee Power)
3. Cold Irons Bound
4. You're A Big Girl Now
5. Can't Wait
6. Silvio
7. Roving Gambler (acoustic)
8. One Too Many Mornings (acoustic)
9. Tangled Up In Blue (acoustic)
10. White Dove
11. Blind Willie McTell
12. 'Til I Fell In Love With You
(encore)
13. Highway 61 Revisited
14. My Back Pages (acoustic)
15. Love Sick
16. Rainy Day Women #12 & 35

個人的に本日のメインイベントだったのは11のBlind Willie McTellだった。 一度ライヴで聞きたかった曲だったのでイントロからもう興奮状態。 ディランさん、あんたもまた凄いブルースマンだ〜。

本当に観に来て良かったとこの曲に没頭している最中、前の若いカップルが大声でしゃべりさわぎ始めた。 ここでは日常茶飯事なのだが、なにもこの曲じゃなくったって、さわぐんだったらSilvioの時にせんかい!などと思っては見たが、とにかく聞けて嬉しかった。

この日の演奏からは、4. You're A Big Girl NowがBobDylan.com.のPerformanceに収録、 7. Roving Gambler がDYLAN ALIVE! VOL.1に収録され発売された。

それとこの日の2階VIP席にはリンゴ・スターの姿があり、ディランに紹介されると、我々に両手でピースサインを送っていた。

ライヴ終了後、会場前でボッーとしていると、群衆の中に始めて東洋系の人物を発見。 しかも、ディランの来日公演の際に何度もお見かけした方だった。 この方の風貌がディランに似ていたので私たちの間では“そっくりさん”と呼ばれ、話題になっていた。 もしかしたらこの方は偉大なある人物ではないのか?と密かに思っていたのだが、友人の“ある人物はそんなに若いはずがない”という意見に押し切られていた。 しかし、後にTV出演されているのを見て予想が当たっていた事が判明。

ごめんなさ〜い、菅野ヘッケルさん、そっくりさんなんて呼んで、しかも勝手に年寄り扱いなんかして許してくださ〜い。 そんな事なら、あの時話しかけておけばよかったと大変後悔致してります。本当に残念。(無知はダメじゃのう〜) DYLAN ALIVE! VOL.1のライナーノーツにヘッケルさんのエルレイシアターでのライヴ体験が書かれています。

一人で去って行くヘッケルさんの背中を見ながら、よし明日もまた来るぞ、とまた思いつつ私もまた退散。


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12月18日ライヴ3日目

今日も元気に○○屋と交渉といくはずだったのだが、いない、どこを捜しても○○屋はいない。
なぜだ?今日は一枚も余ってないのか?

開演まで待ったが、どうにもならない。
とほほっ、渋々諦めて帰ることにした。

後でわかった事だが、この日の前座はシェリル・クロウだったのだ。
人気ものの彼女のおかげでSOLDOUT。
そうか、みんなオープニングアクトを知っていてチケットを買っていたんだ。
そんな事とは知らずにおいらは悩んでいた。

ライヴが見れなければ、L.A.に居てもあんまり面白くないし、何にしろ一日を無駄に過ごした気がしてかなりむなしいのである。
ライヴはあと二回、21日にはL.A.を発って日本に帰り、一日おいてインドへ出発しなければならない。
はて?あと二日、見れるかどうかわからないものにかけてここにとどまるのか?
それとも、、、、。

よし、決定!ここはスパッと諦めて、メキシコへ行こう。
何でそう思い立ったのか今でもよくわからないが、メキシコは面白かった。
その後、サンディエゴで一泊して、無事日本へ帰る。

これも後でわかった事だが、4日目もシェリル・クロウで5日目はなんとウィリー・ネルソンだったそうである。
頑張ってL.A.に残ればよかったかなと思う反面、やっぱりこのメンツじゃ多分三日目と同様にチケットを入手するのは難しかっただろうなとも思う。
とにかく、ディランが元気だった今回2回のライヴは内容的にも十分満足出来たし、その中のいくつかの曲が正規盤として発売されるというプレゼントもあった。

今回の追っかけの様に、何の情報もなしに行って見るというのは非常に新鮮で楽しかったが、やはり無知で損した事も多かったので、インドから帰ってインドぼけが無くなった頃からインターネットを始めだした。

そして追っかけはまだまだ続くのであった。

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